2004年10月24日 日曜日
物や部屋の質感がかなり出ていて、映像に相当な力があります。とにかく美しい! 場面転換の仕方も考えたなと思う部分があり。ただ、音楽、ストーリー、映像などのすべてが、古典的な美意識です。それが作風でウリなんでしょうけど、退屈という人もいるでしょう。編集もちょっとわかりにくいかなぁ。基本的に映像を見る映画かと思います。
ウォン・カーウァイが近未来SFを作ったという触れ込みになっていますが、実際未来の部分はわずかです。(情報によると、時間にして15%らしい。)メインは1960年代。予告はかなり誇張されていると言わざるを得ません。僕は事前に調べていたので知っていましたが、騙された人もたくさんいそう。
-- 以下は、まだ観てない人は読まないほうがいいかも?--
内容が難しいという意見があるようだけど、難しいというより説明が少ないのでわかりにくい。予告が未来の話だという先入観を与えているので、よりいっそう混乱させてる。基本的には、1960年代の小説家のチャウ(トニー・レオン)が小説「2046」を書く事を通じて、恋愛遍歴を回想する物語。それだけなのですが、オープニングを小説2046の世界からはじめるなど、編集で焦点をぼかして作品性を生み出しているようです。だから、「2046へ行けば、失われた愛がある。」というのは、「2046号室で、愛が失われた。」と同じ意味で、既に失われた愛の回想劇ということでいいんじゃないでしょうか。現実の1960年代の2046号室と小説中の近未来の2046という場所は、小説という穴を通じて向き合っているのです。
映画の中に出てきた木の穴に秘密を隠すエピソードは、前作「花様年華」とリンクしているそうですが、個人的な体験を封印するという点で、本作の小説2046のメタファーにもなっているのかもしれません。「花様年華」は観ていないのですが、2046号室のくだりなど、観ておくともっと理解が深くなるそうな。
(2004.10.29 文章修正)
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