2005年8月21日 日曜日
続き物でないオリジナル大作SFとしては、久々の快作です。映像・音楽・シナリオ・キャストなど、どれを取ってもいかにも映画らしい魅力のある素晴らしいものでした。
監督は「ザ・ロック」でメガヒットをたたき出したマイケル・ベイ。個人的には 「アルマゲドン」の馬鹿演出で大変失望させられていたため(監督の責任とも言い切れないのですが)、「パール・ハーバー」以降は見ていませんでしたが、今回は良い意味で後味のキレが良くやや雰囲気の違う作品でした。これまでは、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーとのタッグが定番でしたが、そこから離れたところが大きいみたいです。
■映像
マイケル・ベイ監督作品は強烈な視覚刺激が好きでリアリティーより演出の人なので、「絶対あり得ない。普通、死ぬよ。」というシーンが必ずと言っていいほど用意されており今回も例外ではありませんが、主役たちがクローン人間でしかも目覚めた変異種であるという設定のためか、それほど違和感を感じませんでした。夢のあるハイテクな小道具/大道具が出てくるのもこの監督の特徴で、空飛ぶ未来バイクやクローンの育成施設などが印象的です。近未来のロサンゼルスの映像は未来の車と現代の車が混ざっていて、現実離れしていない。Mazda RX-8やNISSAN Murano、Chrysler CrossFireなど、実在車で比較的未来的なデザインのものがチョイスされているのが面白いと感じました。
■キャスト
ユアン・マクレガーはいまさら説明の必要はありませんね。ヒロインのスカーレット・ヨハンソンも強い意志を持った女性を好演してます。脇役では、スティーブ・ブシェミ、ジェイモン・フンスーがまた個性のある、いい味を出してます。
■音楽
ジェリー・ブラッカイマーのプロデュース作と言えば、ハンス・ジマーによる音楽が定番ですが、今回は「スチームボーイ」の音楽などで知られる、スティーブ・ジャブロンスキーが担当しています。「スチームボーイ」ではオーケストラを基調としたかなり落ち着きのあるトラックを作っていたので、どういったものか気になっていましたが、実はこの人もハンス・ジマー ファミリーの一員でドラムスの歯切れが特徴的なハンス・ジマーのサウンドになっていました。(エンド・ロールにハンス・ジマーがアドバイザーとしてクレジットされてる。)
■シナリオ/編集
クローンの人格/人権という、倫理的に扱いの難しい問題をSF映画として提示しているところが、興味深いですね。起承転結のバランスが良く、最後にもう一山作るあたりがニクいです。2人が男女として目覚めて行く過程も温かいです。ただし、この作品は盗作疑惑があり、著作権侵害で訴えられてます…。
■おまけ
ちなみに、クローンたちはオリジナル人物の名前+コードでできた名前を持っています。(ex. ジョーダン・2・デルタ, リンカーン・6・エコー) デルタとかエコーはアルファベットをフォネティック・コード(通話表)で表しているもので、実際はジョーダン2D、リンカーン6Eという命名を意味し、彼らが製品である事を象徴していますね。
■まとめ
ダイナミックでスピード感のあるVFXはマイケル・ベイ監督の最大の特徴で今回も見所となっています。経済優先の社会が倫理的な問題を引き起こす可能性があるというテクノロジー偏重社会の一つの未来像を、肩肘張らずにエンターテインメント作品として嫌味無く見せているところにSF作品としての存在意義を感じました。クローン人間と対照的に、所属組織の意向に反して人を助けようとする芯のある人間の描写も魅力的です。ジェリー・ブラッカイマー製作からは離れたマイケル・ベイ監督の素晴らしい事!! つくづく、ジェリー・ブラッカイマーが自分の肌に合わない事が分かりました。
堂々の星5つ[★★★★★]
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■「アイランド」 公式サイト
http://island.warnerbros.jp/
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