2006年5月13日 土曜日
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「私は獣にも劣る人間ですが、生きる権利はあるんじゃありませんか? 」
ラストは他言無用!!
これは映画館で観たかった…。遅ればせながらDVDで視聴。土屋ガロンの漫画が原作で、2004年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞の韓国映画「オールドボーイ」。15年間の監禁後の復讐劇というセンセーショナルな部分や残虐な暴力シーンが目を引きますが、緻密に構築されたシナリオと、繊細な映像、家族愛、ユーモアの表現など、韓国映画のいい部分が凝縮。サスペンス+ボーイミーツガール恋愛映画+任侠映画といったテイスト。冒頭が物語の真相の伏線となっていて、プロローグとして秀逸。理不尽かつあり得ない設定に突っ込みたい部分も有りますが、それを上回って良いところの方が多い。
--以下、ネタバレ注意。これから見る人は読まないでください。--
■撮影/照明
照明が優秀なのか、撮影がいいのか、色合いがとても奇麗です。また、カメラアングルや動きが緻密に練られていて、立体的に空間を見せていて、変化がありました。回想シーンへの入り方・見せ方・色合いなどポストプロダクションによる制作部分も自然な作りでGood. なかなかこの質感はレベル高い。
■シナリオ
原作を読んでいないで比較できませんが、聞いた話によるとだいぶオリジナル要素が加えられているそうです。強引な部分も有りますが謎解きは気持ちがよく、伏線の貼り方が奇麗です。家族愛を絡めた展開は韓国映画らしく、評価の分かれるところじゃないでしょうか。
■キャスト
・オ・デス役:チェ・ミンシク(「シュリ」「ハッピーエンド」)
・イ・ウジン役:ユ・ジテ(「春の日は過ぎゆく」)
・ミド役:カン・ヘジョン(「バタフライ」)
など
チェ・ミンシクは荒削りですが、いい顔してますねぇ。感情むき出しで吠える演技が熱いです。
■音楽
「カル」,「JSA」を手がけた音楽監督チョ・ヨンスウのもとで、3名の作曲家(イ・ジス、チェ・スンヨン、シム・ヒョンジュン)が参加。テクニカルな楽曲はありませんが、奇麗にまとまってました。物語の要所要所で雰囲気を引き締めてた、クラリネットのメロディーが印象的でクラシカルなワルツ「ウジンのテーマ」を作曲したイ・ジスは、音楽大学在学中の若干23歳。将来有望ですね。
■気になるところ
・15年も監禁されて、あんなに強い訳がない
・金持ちの息子とはいえ、イ・ウジン(例の弟)の生態が見えない。
・監禁される前の主役の生態も見えない。平凡な男という話だが。
・本当の愛に落ちるように仕向けるのは難しいと言っておきながら、仕掛けが安っぽいような。
・全体の尺の問題も有ると思いますが、監禁された15年の描写が軽い。
・どうでもいいけど、オ・デスの学生時代の服装がダサすぎる。。(ヤンキー?)
■総評
訳が分からず復讐しようとしていたら、実は自分が復讐されていたというどんでん返しは面白い。環境設定が優先して、人物描写がおろそかになっているところが残念ですが、全体にバランスはいいと思います。ただ、韓国映画全般に言える事ですが、時には回り道をしながら、丁寧に説明して終焉まで繋げていく見せ方なので、せっかちな人には向きません。ハリウッド映画とは対局で、それがいいところなんですが。
オチは、儒教の国、韓国ならではのセンセーショナルなタブー破りなのかもしれませんが、韓国映画に多い家族愛のテーマの延長として観ました。
最後の再会シーンは、催眠術でモンスターとしての記憶を無くす70歩にまだ達していません。(数えたところ20数歩です)。複雑な感情の含みを持たせた表現は、再会の喜びのほか、これからすべての真実や経緯を忘れて普通の愛する男女になる、あるいは、なれるのかという不安。そういう思いを表現した演技かと解釈しました。たまにあるパターンですが、結末が記憶の消去っていうのはやはり切ないです。最後、二人が日没か夜明けなのかわからない山脈を眺めますが、希望と不安の入り交じった再出発の表現でしょうか。切ないながらも、希望を感じるエンディングです。記憶に関する表現、孤独人々、破壊と再生というキーワードで、「ファイト・クラブ」のエンディングと共通点を感じました。
全体としては、孤独を埋めるために行き場のない穴にどんどん落ちていく人々のヒューマンドラマとして観ました。とてもオススメ。
「笑うときは世界と一緒、泣くときはおまえ一人」
久々の5つ星 [★★★★★]
・「オールドボーイ」オフィシャルサイト
http://www.oldboy-movie.jp/
・サウンドトラック
東芝EMI (2004/11/03)
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