2006年6月 5日 月曜日
表面の明るさとは対極的に、皮肉で切ないミュージカル映画。
CMで培った映像表現を生かし、シュールな笑いを提供してきた中島哲也監督ですが、今回は重く悲しい話を笑いによって対極的に表現した、とても切ない話です。今までひたすら明るくて楽しかった同監督作品が新しい次元に到達したように見える。中谷美紀の体当たりで幅の広い演技も素晴らしい。
例によって、TOHO-CINEMASのレイトショーにて鑑賞。
■キャスト
中谷美紀の女優としての演技の幅の広さには感服させられました。あんなに色んな人格を表現できる人だとは思っていませんでした。やはり、努力の賜物で胃が痛くなるような辛い仕事だったそうですね。「CASSHERN」では、あまり輝かなかった伊勢谷友介が今回ははまり役で、とてもいい演技をしていました。あとは、宮藤官九郎が壊れた人間のいい目をしていた。ちなみに、大人計画の荒川良々は、必ず中島作品に登場します。しかも、コミカルで物語の味付けを左右するおいしい役で。ぜひ、チェックしておきましょう。チェックしなくても、目立つけど…。
■シナリオ
松子は愛すべき人間だけれど、人生は救いようがない。最後の最後まで救いようがない。しかし、笙(瑛太)の心には確実に影響を与えている。そこが良い。人生は不条理で、思い通りにはならない。年を重ねるほど、いろんな感情が溜まっていくが、安易にリセットはできない。松子は、本人の意に反して何度もやり直しを強いられるが、結局同じ事を繰り返す。しかし、どんなに落ちぶれても清らかで、無性の愛を持ち、松子は神のようだ。この話はフィクションだけど、松子が笙に影響を与えたように、映画館を後にした我々にも何かを残してもらったような気がしてならない。
■ 音楽
ミュージカル映画らしく、膨大な曲数。
歌ものには、ボニーピンクやA.I、木村カエラなど様々なミュージシャンが参加。中谷美紀は昔、坂本龍一プロデュースでCD(「 The Other Side of Love」etc..)を出していた事もあるので、歌がうまい。スコアは、ガブリエル・ロベルトと渋谷毅。冒頭5分のめまぐるしい展開に追従する楽曲がすごい。
■ 映像/編集
中島哲也作品には、コントラストが強く赤や緑の原色が目立ち、CGやフィルターを目的のためには惜しげなく使うという特徴があり、今回も例外ではありません。CGをばりばり使いながらも、目的がはっきりしていて無駄な押しつけがないですが、強烈な原色系の色合いは好き嫌いの分かれるところでしょう。テンポのいいカット割りや、過去・現在をシームレスにつなぐ、自然な編集にテクニックが光る。ミュージカル映画ということもあり、映像と音楽をノンリニア編集しながら並行して当て込んでいくという、非常に手間のかかる作業で生まれたテンポの良さが素晴らしい。特に、冒頭の5分が強烈で、出だしで物語全体のスピードとうねりを生み出していると言っても過言ではない。悲惨な方向にどんどん突き進む松子と対極に、画面にちりばめられた美しい花々が皮肉で象徴的。
■ まとめ
中島色の強い個性がありながら、全体の統一感のおかげで、とてもまとまっている。昔ながらの日本人の人柄の良さが感じられ、笑いと泣きというツボを押さえる事で娯楽性も確保していて、日本映画の新しい流れに期待させられる。
この映画には、1つの答えはない。ただ、娯楽作として楽しんでも良いし、松子を反面教師にしても良い。逆に、まっすぐで人間らしい松子に共感しても良いし、神のような松子に憧れても良い。悲劇として泣いても良い。そういう多面体になっているのが素晴らしい。たくさんの枝に実がなって、幅広い層に訴求する。答えのない人生そのもの。
中島哲也監督が新しい次元に到達したのを見た。
よって、今回も星5つ[★★★★★]
■関連リンク・書籍・DVD
・原作本
嫌われ松子の一生 (上)
嫌われ松子の一生 (下)


・テーマソング 「LOVE IS BUBBLE / Bonnie Pink」
・サウンドトラック「嫌われ松子の曲たち」
・ヴォーカルアルバム「嫌われ松子の歌たち」

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監督:中島哲也
出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、木村カエラ、柴崎コウ、片平な... [続きを読む]
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むむぅ~、今回はすごく見たいと素直に思った。
いや、今までのレビューがどうとかじゃなくてね(^^;
松子ってとても儚くて尊い人なんだろうなぁ。
そして、人間ってみんなそうなんだろうなぁ。
自己に矛盾を感じながら、それでも生きて行かざるを得ない。
レビュー読んだだけで少し勇気付けられた気がします。
ありがとう。
昨日拝見してきました。ちょっと前に原作も読んでいたのですが、映画を観て根底にあるものが、ぶれてないことにすごいな~と、監督に感服したしだいです。
私が観ていたとこは60席と小さい小屋でした。同じ時に観てたのは若い人が多かった。その若い人達はこの映画、どう思ったのかな・・・って、気になりました。
映画って監督のものだけど、観客のものでもあると思うんです。
個人的には、愚かだけど、目いっぱい!つまんない人生なんてないよ!!!って・・・辛いはなしだけど・・・
自分も再生するぞ!!!って、変な元気が・・・
ポップな映像も薄ら淋しい・・不思議な映画でした。
皆さん、どうでしたか?