2006年7月18日 火曜日
ゲームのシリーズ第1作「サイレントヒル」をベースにしながら、主人公を女性に置き換えた本作。映像はまさにサイレントヒルの世界を再現していて、この上なく雰囲気が素晴らしい。監督は「ジェヴォーダンの獣」のクリストフ・ガンズ。
■映像
1960〜70年代のまま時間の止まった街は、文句の付けようがないくらい雰囲気が出ている。ゲームを再現した不安をあおるアングルやHDデジタルカメラならではの暗闇の表現が素晴らしい。特に、表世界と裏世界の変化する様の実写化がすごい。ちなみに、監督は大友克弘の「AKIRA」のファンらしく、クライマックスシーンの暴れるアレッサ(実体)は、「AKIRA」にインスパイアされたとか。
■衣装・クリーチャー
徐々に汚れに染まり、シーンごとに色を変えていく主人公ローズの衣装や、アレッサの紫のドレスが印象的。また、クリーチャーは、ゲームでおなじみのダーク・ナースや三角頭(レッド・ピラミッド)などが登場。しかし、レッド・ピラミッドは、ゲームでは主人公の罪悪感が具象化した自分自身という重要な存在なのですが、なんの意味付けもなく、ただの強いクリーチャーとして登場しているのは残念。なお、各クリーチャーは着ぐるみのダンサーを撮影し、ポストプロダクションで怪物に仕立て上げたという事で、生命感のある奇妙な不気味さがよく出ています。CGではこうは行きません。
懐中電灯やラジオといった、お約束のアイテムももちろん登場。
■シナリオ
オリジナルの世界観やエピソード、設定をちりばめながら、1つの話としてよくまとまっていたと思います。しかし、個人的には、ゲーム「サイレントヒル2」のように、叙情的かつ陰鬱で、真実を知るとちょっと良い話であるという趣きが欲しかった。また、原作の設定である父子を母子に置き換え、母子愛という分かりやすいテーマで行動の動機付け、物語の求心力を高めようという狙いは理解できるけれど、雰囲気が変わってしまった。まぁ、男の主人公であの内容だと重すぎるかもしれませんね。それにしても、オチがいまいち。
■音楽
冒頭からゲーム1作目のテーマ曲イントロが使われる。映画中もゲームの音楽がそのまま使われていたり、エンディングも「SILENT HILL3」のテーマが使われていたりと、ファンサービス全開。土屋アンナの主題歌「Lovin' you」もタイアップ商法の匂いがして嫌だと思ってましたが、予想以上に上手く、雰囲気も合っていました。
■まとめ
ビジュアル・音楽はほぼ100点。ゲームプロデューサーの山岡晃氏が製作総指揮をしているだけあって、ゲームの世界を壊さず完全に再現している。しかし、ストーリーが原作(ゲーム)と異なり、つながりも壊してしまっているので、サイレントヒルの世界観を映像で紹介・補完する作品として考えるべき。よって、シナリオで減点して星2つ!
[★★☆☆☆] ちょっと厳しすぎたかな?
パンフレットの出来が素晴らしく、写真集のようです。ぜひ劇場で購入を。
■関連リンク
・映画「サイレントヒル」オフィシャルサイト
http://www.silenthill.jp/
・ゲーム「サイレントヒル」オフィシャルサイト(KONAMI)
http://www.konami.jp/gs/game/silenthill/
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