2007年2月 7日 水曜日
人はそもそも不完全なもの。主人公の特殊な能力を通して、人間の本質や不完全さを精緻で透明感のある文体で本多 孝好が描く。 …久々の書評です。
常識的には固い絆とされる、親子・恋人・友人などの関係が、実は、モラルや社会通念などの危ういものに支えられ、また、それらに縛られている。その呪縛から解き放たれたとき、我々は幸せになれるのか。元々、一人一人の異なる個体同士である人間たちが、論理的思考や物理的肉体に翻弄されながらも絆を保ち、共生しようとする姿を、タガが外れて(外して)しまった人間との対比によって削りだしていく。作者独自の人間に対する視点がとても興味深い。
主人公の体験を通じて人間の本質を読者に突きつける内容は、一見、残酷のようにも見えるが、その向こう側には人間の不完全さを許容する精神や、人間への親しみや希望の感情が見える。作者の処女作「MISSING」も人間の揺らぐ感情にクローズアップした泣けるミステリーでとても良かったが、本作はさらに深い内容になっています。
一般常識や共通の無意識の領域などで人間同士が同じ意識を共有しているとしても、肉体の物理的・化学的差異や生い立ちなどによって、それぞれの思考回路は個々固有に形成されているもの。それを本質的に理解しなければ、誰かと共に生きることなどはできませんね。まずは差異を許容することから始まると思います。どういう関係にしろ。
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