2007年5月 5日 土曜日
菊池凛子のアカデミー賞助演女優賞ノミネートなど、何かと話題の映画「バベル」を公開3日目に観てきました。これは、話題の映画だから...と言って、暇つぶしに観に行く類いの映画ではない。旧約聖書 創世記に登場するバベルの街の話(神の怒りにより、人々は言語を分かたれた...)をモチーフにして、アメリカ人観光客の銃撃事件をきっかけに、言語や文化の隔たりの中で翻弄される現代人を群像的に描いた良作。
我々は人種・言語・国際関係などで線引きをし、互いの領域を浸食せずに共存している。安定を保っていた関係を1発の銃弾が貫き、そこかしこに存在するコミュニケーションの問題に気づかされる。
最後に事件は解決し物語は収束するものの、この映画が提起したもっと大きな問題 "世界に実在するコミュニケーション問題" には結論がない。だから、観賞後の後味は、決してすっきりしたものではない。しかし、人と人を結びつけるのは何か、また、人と人を隔てるものは何か、と言う事を考えるきっかけになれば、きっと監督の思惑通りなのだろう。
観客にちゃんと考えさせる構成に好感が持てる。無意味な派手さは無く、硬派かつ精緻に、時には包み隠さずストレートな演出も良い。コテコテのハリウッド娯楽作を好む客層には、向かない作風。菊池凛子の体当たりの演技は関心するが、ろう者には印象が悪いかもしれない。
■まとめ
言葉は違えど、世界は繋がっている。コミュニケーションの問題で孤独を感じたり、混乱を生じたりするが、生の人間同士に国家の壁や上下関係はない。その先どう行動するか、この映画は問題提起しているが答えは無い。混乱のまま生きるか、自分なりの秩序を見いだすかは、個々人に投げられています。
星4つ[★★★★☆]
■リンク
・映画「バベル」公式サイト
http://babel.gyao.jp/
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