2008年8月 7日 木曜日
バットマンという主題を使って、人間の深部を描いた重厚で深い作品です。8月2日 先行上映で鑑賞(全国上映開始は8月9日から)。結論から言うと5つ星。今年、最も素晴らしい映画の1つであることは間違いありません。なにより、ジョーカーを演じる故ヒース・レジャーの鬼気迫る演技はとても素晴らしく、主役のバットマン(クリスチャン・ベール)がかすむほど。ある意味、ジョーカーが主役。
「バットマン」と言えば、アメリカン・コミックが原作のダーク・ヒーローものですが、「バットマン ビギンズ」以降の新シリーズは、生々しい人間描写が特徴です。勧善懲悪の単純な世界はここにはありません。前作を凌駕するほどの超シリアスタッチになっており、アクションシーンもさることながら、社会派犯罪ドラマの側面が大きい。ジョーカーのセリフ"Why so serious ?"が象徴していますね。
実は、僕はクリストファー・ノーランが昔から大好きで、「メメント」や「マシニスト」はDVDも持ってます。この監督は様々なテーマを扱えど、1つの共通点があります。それは、光と陰の間を揺らぐ人の感情描写を通じて、人間の本質、言い換えれば倫理・道徳について描いているという事です。また、それが人間臭くて良いんです。ハリウッド大作になっても初期の味を失わず、正常進化しているところは素晴らしいですね。
具体的な要求がなく犯罪自体を目的とし、論理を超越した悪である「ジョーカー」には、現代病理的なものを感じさせられました。本作の「ジョーカー」は「飽食社会に潜む闇」のメタファーでしょうか。
重厚で美しい映像。部分部分に挿入されるウィットに富んだ会話。脇を固める、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンなどの名優たち。渋く重厚だけど、暖かみのあるハンス・ジマーのスコア。新シリーズを見てしまうと、本当に旧シリーズは暇つぶしの娯楽作品にしか見えない。
ジョーカー役のヒース・レジャーが亡くなられたのは残念でなりませんが、遺作は映画史に残る傑作でした。ありがとう、ヒース。
[★★★★★]
- リンク -
・The Dark Knight - 公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thedarkknight/
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